新学期、子どもの学校生活で「あれ?」と疑問を感じた時、学校に電話をかけるべきか悩む保護者は少なくない。「クレーマーだと思われたらどうしよう…」という不安も頭をよぎるだろう。しかし、結論から言えば、分からないことは積極的に電話で確認することをおすすめする。
ただし、その「伝え方」には、いくつか気をつけたいポイントがある。特に、先生の行動に不満や怒りを感じている場合、その感情のまま電話をかけてしまうと、かえって問題がこじれてしまうこともある。
今回は、以前紹介した「時間割を伝えない先生」のケースを例に、「非常識な先生」と感じる相手に、本当にこちらの意図を伝え、改善を促すための効果的なコミュニケーション術を紹介する
その言葉、先生を「問い詰めて」いないか?
もし、あなたが先生に電話をかける際、次のような言葉を思い浮かべたとしたら、少し立ち止まって考えてみてほしい。
【NGな伝え方の例】
①「先生、時間割はいつになったら教えてくれるんですか?」
②「先生は、明日の予定をお知らせにならないようですが、子どもだからと言って馬鹿にしているんですか?」
③「翌日の生活に見通しを持たせることは、小さい子でも大事なんじゃないでしょうか?」
④「9歳までは、学校生活の大事な習慣を身につける大事な時期なんじゃないでしょうか?」
⑤「平仮名は一通り学習しているはずですよね。なぜ使わせないんですか?」
⑥「連絡用のノートは保護者負担で買っていますよね。おかしくないですか?」
これらはすべて「問い詰め型」の言葉では問題はほとんど解決しない。
なぜなら、これらの言葉の背後には、「先生のおかしい点を突いてやろう」「考え方を正してやろう」という「怒り」の感情が隠れているからだ。もっと言えば、「先生を困らせてやろう」という思いが透けて見えてしまう。
このような「怒り」を伴った言葉は、相手(先生)への攻撃となる。攻撃された側の先生は、当然、自分を守ること(言い訳)に腐心する。ほしいのは反省・改善なのだが、問い詰められる側は(ほとんど例外なく)自分を守る行動をとる。
問い詰める側にとって、それは「言い訳」にしか聞こえず、ますます怒りがこみ上げてきてしまう。ついつい責め立ててしまい、相手の「反省・改善」からはどんどんと離れてしまう。
怒りの感情が解決を遠ざける理由
カッとなったり、メラメラとした怒りの感情に支配されている時の脳は、例えるなら「ショートした状態」。冷静な思考ができていないと思った方がよい。当然、電話の相手への言葉も、温かさや冷静さを欠いたものになってしまう。「先生に非を認めさせよう」「困らせよう」という思いが先行すると、双方の会話はうまくまとまらない。ひどい時には「自分でも何を言っているのか分からない」まま通話時間だけが長引き、結局何も解決しないまま電話を切る、という最悪のケースにもなりかねない。そして、電話を切った後、さらに怒りが倍増してしまう…という悪循環に陥ることもある。
先生も一人の人間だ。自身の考えで直すべきところは直し、譲るべきところは譲ることもできるはずだ。しかし、感情的に責め立てられると、冷静な話し合いは難しくなってしまう。学校と家庭の双方にとって有益な話し合いを進めるための第一歩は、何よりもまず「怒りを落ち着かせること」だ。怒りの感情が収まっていないまま電話をかけても、相手には伝わらないし、受け入れてもらうことも難しくなる。
先生に「伝えたいこと」を1つに絞る
怒りを落ち着かせるための一つの効果的な方法は、「この電話で先生に何を伝えるか」ということを明確にしてからダイヤルすることだ。
ポイントは、先生へ伝えることを「一番言いたいこと、たった一つに絞る」こと。あれもこれもと欲張らず、核となるメッセージを明確にすることだ。例えば、先の「時間割を伝えない先生」のケースであれば、次のように伝えてみてはどうだろう。
効果的な伝え方の例
「先生、いつも子どもたちへの細やかなご配慮、ありがとうございます。特に、重い荷物を持たせなくて済むよう教科書を学校に置いておくというご配慮、感謝しています。そろそろ家庭でも翌日の時間割合わせを子どもにさせたいと考えているので、お手数ですが、翌日の予定をお知らせいただけると幸いです。」
「先生、いつもお世話になっています。子どもが家に帰ってきて、学校で学んだことをとても嬉しそうに話してくれます。親としても、その成長を間近で見られるのは大きな喜びです。親としても学習をサポートしてあげたいので、主な教科書や教材を家に持ち帰らせていただくことは可能でしょうか。多少重くても、子どもには我慢するように言い聞かせるので、ご検討いただけると幸いです。」
「理由+お願い」型で 先生との信頼関係を築く
いかがだっただろうか? 心が落ち着いていれば、冒頭の「問い詰め型」の電話ではなく、「感謝の言葉+理由+お願い」型に変えることは誰にでもできる。一般的な礼儀として感謝の気持ちを添えた上で、こちらの願いや思いをスッキリと伝えられるはずだ。
そうすれば、先生も「〜さんのお母さんの言う通りだな」と納得し、歩み寄ってくれる可能性が高まるだろう。
大切なのは、感情的にならず、冷静に、そして建設的に問題を解決しようとする姿勢だ。この姿勢が、学校と家庭のより良い関係を築く第一歩となるだろう。
(電話で伝えること 終)